矢崎仁司『三月のライオン』

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偏愛?!新企画!◇あんましのあたんない邦画劇場◇
「三月はライオンのようにやってきて、子羊のように去っていく」
----◇第六夜◇矢崎仁司『三月のライオン』----



恋人の名はアイス...。
アイスは丈の短いレザージャケットにミニのフレアスカート、真っ赤なハイヒール。いつも担いで歩くクーラーボックスには、いつも齧っているアイスキャンデーやお金にカメラも入っていたり。



愛が動機なら / やってはいけないことなんて / 何ひとつ、ない.....
ジャン・コクトーの「恐るべき子供たち」以来の、近親相姦を描いた本作は、92年公開時、10代の若者たちの熱狂的な支持を受け、多くのリピーターを生み出した。記憶喪失の兄と妹の愛しくも切ない物語。
1991年のベルリン映画祭ヤングフォーラム部門に出品したのを皮切りに、メルボルン、バンクーバー、ロンドン、ロッテルダム、エーテボリ、シンガポール、ヘルシンキなど世界各国の国際映画祭で上映され、'92年ベルギーのPRIX DE L'AGE D'ORでは、『三月のライオン』は、矢崎自身が敬愛するデレク・ジャーマンも受賞したベルギー王室主催〈ルイス・ブニュエルの『黄金時代』賞〉を受賞した。'93年にベルギー、オランダで一般公開され、オランダでは"Skrien"誌で年間ベスト3に選ばれるなど話題を呼んだ。



『三月のライオン(1991年)』
監督・脚本 矢崎仁司 (「風たちの午後」「花を摘む少女と虫を殺す少女」)
出演 趙方豪/由良宣子/奥村公延/芹明香



兄と妹がいた。 妹は兄をとても愛していた。 いつか、兄の恋人になりたいと、心に願っていた。 ある日、兄が記憶を失った。 妹は、兄に恋人だと偽り、病院から連れ出した。 記憶喪失の兄は、恋人だという女と一緒に暮らし始めた。 そして、兄は恋人を愛した。 恋人の名はアイス。
氷の季節と花の季節の間に三月がある。 三月は、あらしの季節・・・



ふたりが住居として選んだのはあと二ヶ月で取り壊される都会の廃墟のような古いビルの一室。前の住人が残していったわずかな家具に冷蔵庫をたして、ぎこちない2人の生活が始まった。紗のかかったような画面の向こうで淡々と静かに切なく物語は進んでいく。
記憶が戻るまでのかりそめの愛の日々。その中にあっても心寂しい少女が夜毎続ける行きずりの「恋愛」。
アイスは兄ハルオの記憶が戻る時、即ち二人の関係が終わる時を恐れ苦悩する。...。このえもいわれぬ閉塞感と絶望感が支配する映像がとてもいいです。ほとんど全編、主役二人しか登場しない中で丁寧に映像が追う二人の心象風景はとてもピュア。35ミリのクリアな画質で撮られ、繊細で詩的な映像美は一度見たら、いつまでも記憶に残る。


だが、日がたつにつれてハルオは少しずつ記憶を取り戻していく。
「だれかを愛していたことを思い出した」と、ハルオは現実の恋人を思い出す。

「愛していたのはあたしじゃないよ。」

ある日兄は全ての記憶を取り戻し、全てを知りつつ妹を抱く。ハルオはアイスが妹だということを思い出すのだけど、彼女の一途な愛情に、きずかないふりをしたままにしておくのです。兄の記憶が戻ったことを知る妹。二人は最後の苦悩に責められるが、桜の咲く春、妹は兄の子供を出産する。

氷の季節と、花の季節の間に、三月がある。
三月は、嵐の季節……

とんでもなく不道徳でエキセントリックな話のはずなのに、あまりに抑制の利いたひそやかな話法で、むしろたまらなく身にしみて懐かしく切ない気持ちにさせられる。近親相姦というベタベタしそうなテーマを扱っているのに、そういう生々しさ?とは一切無縁な感覚的映画。近親相姦の危うさを純粋な愛の形に昇華させた演出はお見事!監督の力量です。



<趙方豪(チョウバンホウ>

ハルオ(兄)を演じた趙方豪(チョウバンホウ)さんは1997.12、悪性胸腺腫のため亡くなられました。41歳という若さでした。井筒和幸監督「ガキ帝国」でデビュー。テレビ・映画で主に名バイプレイヤーとして活躍。1987年、胸腺腫により左肺の2/3を切除。本作「三月のライオン」でカンバック。1996年再発。風間志織の「冬の河童」での情感豊な名演が忘れがたい。



<由良宣子>

ポラロイドカメラを持っていて自分の顔を撮っては公衆電話に貼り付けていくシーンやハルオの散髪のシーンが印象に残ります。現実味がなくてとても理解が難しいだろう妹役を気負いなくナチュラルにアイスを演じた由良宣子がとてもキュートで魅力的!



矢崎仁司(やざき・ひとし)監督 <フィルモグラフィー>

1975年 『裏窓』(8mm)
1977年 『冬の光』(8mm)
1980年 『風たちの午後』
(16mm・パートカラー/105分)
1991年 『三月のライオン』
(35mm(オリジナル16mm)・カラー/118分)
1992年 『Maybe Next Time』8mm・カラー/10分)



2000年 『花を摘む少女と虫を殺す少女』
(デジタルビデオ・カラー/236分!)
9年ぶりの意欲作は、矢崎監督がロンドン留学中に古典バレエの有名戯曲「ジゼル」をモ チーフに書き上げたオリジナル脚本で、現代のロンドンを舞台に、4人の男女の愛と 裏切り、夢と絶望、生と死を、独特な映像美で感性豊かに描いた作品である。


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名サイト! ■日のあたらない邦画劇場■
管理人様(一部上場企業女性管理職さん!)に敬意を表して
◇あんましのあたんない邦画劇場◇
として今晩からシリーズ化していこうかなと思います。

◇第一夜◇「人間って、大きいんかい、小さいんかい・・・」小栗康平『眠る男』

◇第二夜◇♪愛のくらしに少し疲れた あなたとわたし SEXY♪..... 荒井晴彦『身も心も』

◇第三夜◇ジンセイは傷ついたもん勝ち!富樫森の名作『非・バランス』

◇第四夜◇中島丈博『おこげ(OKOGE)』

◇第五夜◇金子修介『1999年の夏休み』




ekato
YOKO MY LOVE

矢崎監督、寡作ですが、日本で一番デレクジャーマンに近い映画監督ではないかと睨んでいます。
。(´-`).。oO

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